関節リウマチの咳・息切れ
関節リウマチの咳・息切れ
溝の口・高津区エリアの関節リウマチの患者さんで、以下のような症状に心当たりはないでしょうか。
関節リウマチは関節の痛みや腫れが中心の病気ですが、実は全身の病気(膠原病)の一つでもあり、肺や気管支に影響が及ぶことがあります。
関節の痛みで動きにくくなるぶん、息切れも「体力が落ちたせい」と思われがちですが、実際には呼吸器そのものに原因が隠れているケースも少なくありません。
当院の院長は大学病院・呼吸器専門病院での勤務が長く、関節リウマチの患者さんの呼吸器合併症について、膠原病内科と連携しながら診療を行ってきました。
このページでは、関節リウマチの患者さんが見過ごしがちな呼吸器の病気について、専門的な立場から解説します。
関節リウマチは、全身の関節に痛みや腫れが生じる病気としてよく知られています。
しかし関節リウマチは膠原病の一種であり、関節だけでなく全身に影響が及ぶことがあります。
肺や気管支も例外ではなく、そこに炎症や障害が生じると、咳や息切れという症状につながることがあります。
関節リウマチの患者さんに咳や息切れが現れた場合、主に次のような原因が考えられます。
これらは症状だけで区別することが難しく、原因によって対応も大きく異なります。
また、複数の原因が原因となることもあります。そのため、呼吸器内科医と膠原病内科医が連携しながら評価・管理を行うことが重要です。
関節リウマチでは、関節に炎症が起こり軟骨や骨が壊れていくのと同じように、肺にも炎症が生じ、組織が硬く変化してしまうことがあります。これが関節リウマチに伴う間質性肺疾患(RA-ILD)です。
初期には自覚症状がはっきりしないこともありますが、進行すると空咳(痰の絡まない乾いた咳)や、体を動かした時の息切れが目立つようになります。
進行すると肺活量が低下し、元に戻りにくくなることがあるため、早期発見・早期評価が重要です。
診断には、聴診で特徴的な音(捻髪音と呼ばれる、マジックテープを剥がすような音)を確認したり、レントゲンで陰影の異常を認めた際にCT検査を行い、肺の状態を詳しく評価します。
進行は放射線画像とスパイロメーターの悪化のスピードで評価しますが、病状の進むスピードは患者さんごとに多彩です。
治療の基本は、関節リウマチそのものの治療をしっかり行うことです。
それでも間質性肺炎が改善しない場合には、ステロイドや抗線維化薬などの投与を検討します。これらは専門性の高い治療となるため、当院では高次医療機関と連携し、適応を判断したうえで管理していく方針としています。
関節リウマチの治療では、免疫の働きを抑える薬剤を使用することが多くあります。
これらの薬剤は関節の炎症を抑え、日常生活を維持するために欠かせないものですが、一部の患者さんでは、薬剤とご本人の相性によって肺に炎症を起こしてしまうことがあります。
原因が感染症ではなく、薬剤によるアレルギー反応や、薬剤が直接肺の組織を傷つけることによって生じるものを「薬剤性肺障害」と呼びます。
関節リウマチの治療で用いられる薬剤のうち、メトトレキサートや一部の生物学的製剤、JAK阻害薬などで起こりうることが知られています。
症状としては、発熱、乾いた咳、息切れなどRA-ILDと似た症状が現れることが多く、薬剤を使い始めて間もない時期に起こることもあれば、長期間問題なく使用していた薬剤で、ある時期から症状が出てくることもあります。
そのため、「今まで大丈夫だったから」と自己判断せず、症状の変化があれば早めに相談していただくことが大切です。
対応としては、原因と考えられる薬剤を中止したうえで、重症度に応じてステロイドなどの治療を行います。
ただし、薬剤を中止すると関節リウマチ自体の病勢が悪化するリスクもあるため、中止の判断は容易ではありません。
また、薬剤性肺障害なのか、それともRA-ILDの病勢そのものが悪化しているのかは、症状だけでは判断が難しいこともあります。
こうした場合には、呼吸器内科医と膠原病内科医が連携し、画像所見や経過を総合的に評価しながら方針を決めていくことになります。
関節リウマチは、体の中で免疫の異常が起こり、全身に炎症を起こしてしまう病気です。
関節リウマチの治療では、この過剰な炎症を抑えるための薬剤を用いることが多くあります。
非常に重要な治療である一方、炎症を抑えるということは、免疫の働きを抑えることの裏返しでもあります。
その結果、通常であれば重症化しにくい感染症が重くなりやすかったり、健康な方であれば感染することが珍しいカビや特殊なウイルスが、肺に合併症を引き起こすことがあります。
特に、サイトメガロウイルス肺炎、ニューモシスチス肺炎、肺アスペルギルス症などは、診断と治療において専門的な診療が必要となる合併症です。
これらの感染症は、発熱、咳、息切れといった症状で始まることが多く、通常の風邪と区別がつきにくいことがあります。
免疫抑制療法中に「いつもと違う」発熱や咳が続く場合には、自己判断で様子を見ず、早めにご相談ください。
当院では、免疫抑制療法を受けている患者さんに対して、定期的な血液検査や胸部レントゲンによる経過観察に加え、インフルエンザ・肺炎球菌ワクチンなど各種予防接種のご案内も行っています。
感染症を早期に発見し、重症化する前に対応することを大切にしています。
喘息は、気管支のアレルギー性の炎症によって咳や息苦しさが生じる病気です。
関節リウマチも、免疫の異常によって全身に炎症が起こる病気であり、実は喘息と関節リウマチは合併しやすいという関連が、複数の研究で指摘されています。
喘息が厄介なのは、レントゲンやCTでは異常が写りにくいことです。そのため、これまで説明してきたRA-ILD・薬剤性肺障害・呼吸器感染症のいずれでも症状の説明がつかない場合に、喘息の合併を考える必要があります。
一方、COPD(慢性閉塞性肺疾患)は喫煙が主な原因となる病気で、関節リウマチそのものとの関連は喘息ほど明確ではありません。
ただし、喫煙歴のある関節リウマチの患者さんでは、息切れの原因がCOPDによるものなのか、それともRA-ILDや薬剤性肺障害によるものなのかを見極める必要があり、この鑑別は治療方針を左右するため重要です。
当院では、呼気一酸化窒素濃度(FeNO)検査やスパイロメーター(呼吸機能検査)を用いて、喘息やCOPDの合併がないかを確認しています。
画像検査だけでは分からない気道の状態を評価できることが、これらの検査の強みです。
関節リウマチは、ごく稀に他の膠原病(強皮症や抗合成酵素抗体症候群など)の特徴を併せ持つ「オーバーラップ症候群」を伴うことがあります。
落ち着いていたはずの関節症状が再び悪化したり、それまでとは違う症状(手指のこわばりの変化、皮膚の変化、筋力低下など)が新たに現れたりした場合には、こうした可能性も含めて評価が必要です。
オーバーラップ症候群を伴う場合、呼吸器症状が悪化することがあるため、膠原病内科医との連携診療が重要です。
当院では、そうした所見が疑われる場合、呼吸器の評価を行ったうえで膠原病内科と情報を共有し、両科で経過を診ていく体制を整えています。
関節リウマチの患者さんの咳や息切れは、原因が多岐にわたり、専門的な知識がないと正確な診断が難しい領域です。
ここまでご紹介してきた通り、RA-ILD、薬剤性肺障害、感染症、喘息の合併、オーバーラップ症候群など、考えるべき可能性は一つではありません。
だからこそ、症状だけで自己判断せず、一度呼吸器専門医にご相談いただきたいと思っています。
私自身、大学病院・呼吸器専門病院での勤務を通じて、関節リウマチをはじめとする膠原病の患者さんの呼吸器合併症を数多く診てきました。
診断や治療方針を決める際には、膠原病内科の先生方としっかり連携を取ることはもちろん、患者さんご自身が「なぜこの検査が必要なのか」「今何が起きているのか」を理解し、納得したうえで治療を選んでいただけるよう、丁寧な説明を心がけています。
すでに他院のリウマチ科・膠原病内科に通院中の方も、遠慮なくご相談ください。
呼吸器の評価を行ったうえで、通院中の先生と情報を共有しながら診療を進めることができます。
溝の口駅前内科・呼吸器内科では、関節リウマチの患者さんが呼吸器の不調を一人で抱え込むことなく、安心して相談できる場所でありたいと考えています。
呼吸器内科の受診をおすすめします。関節リウマチの患者さんは、一見風邪のような症状でも、間質性肺疾患や薬剤性肺障害、感染症など考えるべき病態が多いため、呼吸器専門医による評価が重要です。
はい、ぜひご相談ください。全身の治療方針は通院中のリウマチ科・膠原病内科の先生にお任せしつつ、呼吸器の症状については当院で評価を行い、連携しながら診療を進めることができます。
タイプによって経過は異なります。慢性的に進行することが多いとされていますが、炎症の要素が強いタイプでは、ステロイドなどの治療によって症状や進行を緩やかにできることもあります。早期に発見し、適切な治療方針を立てることが重要です。
いいえ、すべての薬剤で起こるわけではありません。関節リウマチの治療に必要な薬剤である一方、薬剤によって肺への影響の頻度は異なります。気になる症状があれば自己判断で中止せず、膠原病内科・呼吸器内科とご相談のうえ方針を決めることが大切です。
執筆・監修
溝の口駅前内科・呼吸器内科 院長 高野賢治
(日本内科学会認定総合内科専門医・日本呼吸器学会認定呼吸器専門医・日本アレルギー学会認定アレルギー専門医)
参考文献
日本呼吸器学会・日本リウマチ学会 合同「膠原病に伴う間質性肺疾患 診断・治療指針2025」
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