2026年10月05日

電車やバスに乗ると息苦しい・咳が出る方へ
「電車に乗ると息苦しい」「バスに乗ると苦しくなる」とお悩みの患者さんが、呼吸器内科の外来をしていると時々いらっしゃいます。
いくつかの病気が考えられますが、一番重要なのは、内科の病気もあったり、精神的な病気の可能性もあるので、十分な検査と診察をした上で考える必要があるということです。
この記事では、「電車やバスに乗ると息苦しい・咳が出る」という特定のシチュエーションで生じる悩みについて呼吸器専門医の立場から解説します。
なぜ電車やバスで息苦しさや咳が出るのか?
電車やバスの中で息苦しさや咳の症状が出たとき、「体質だから仕方ない」と諦めてしまう方は少なくありません。しかし背景には、内科的な原因と精神科的な原因の両方が考えられ、この2つを見分けることが適切な対処への第一歩になります。
内科的な原因
電車やバスで息苦しさや咳が出る場合、気管支喘息を含め、さまざまな原因が考えられます。
喘息をお持ちの方は、車内の空調が直接体に当たる環境や、逆に窓が閉め切られ空気がこもった密室状態の車内で、症状が悪化しやすいと訴えられることがよくあります。
また、混雑した車内では、香水や柔軟剤の香り、ディーゼル車の排気ガスなど、化学物質への曝露も気道を刺激する一因になります。
加えて、真夏や真冬は、冷房・暖房の効いた車内と外気との温度差が大きく、この急激な温度変化によって気道が収縮し、咳や息苦しさにつながることがあります。
他にも、電車で長時間立っているときに症状が出やすいようであれば、貧血や自律神経障害を考える必要あります。
精神科的な原因
一方で、内科的な検査や治療では説明がつかない息苦しさもあります。
満員電車やバスのような閉所・混雑した環境は心理的なストレスを強く感じやすく、それが引き金となって過換気症候群を起こすことがあります。
また、過去に電車内で強い不安や息苦しさを経験したことがある方は、「また同じことが起きるのでは」という予期不安から、乗車前や乗車中に症状が誘発されるパニック障害の可能性も考えられます。
内科的な原因が否定された場合、こうした精神科的な要因を視野に入れることは、正しい診断・治療につながる非常に重要な視点です。
当院での診断の流れ
電車やバスで息苦しさや咳が出る場合、当院では「まず内科的な原因を可能な限り除外する」ことを大切にしています。そのうえで、必要に応じて精神科的な視点を加えていきます。
●まず、症状が出る状況をくわしく伺います
どのような場面で、どのような症状が出るのかを確認します。特に、「苦しくなって電車やバスから外に逃げ出したくなる」といった状況がある場合は、パニック障害をはじめとしたメンタルヘルスの問題が背景にある可能性が高くなります。
●内科的な原因の検査
まず胸部レントゲン検査を行い、肺や心臓に異常がないかを確認します。
電車やバスでの息苦しさ・咳は気管支喘息が原因であることが多いため、呼気一酸化窒素濃度(FeNO)を測定し、気道に喘息特有の炎症がないかを調べます。
これらの結果から喘息が疑わしい場合は、まず喘息の治療を開始します。
●喘息として説明がつかない場合は
検査結果が喘息として一致しない場合や、喘息を想定して治療を行っても症状が改善しない場合には、パニック発作の可能性を強く疑います。
パニック発作が強く疑われる場合は、心療内科へご紹介します。
一方、心療内科の診察でパニック発作らしさが乏しいと判断された場合は、再び内科的な原因の検索に戻ります。貧血や甲状腺機能の異常がないかを血液検査で確認し、原因を丁寧に探していきます。
院長からのメッセージ
電車やバスに乗ると息が苦しくなるというのは、あなただけの悩みではありません。
原因は人によってさまざまで、内科的な問題で困っている方もいれば、メンタルヘルスの問題で困っている方もいます。
当院では、まず内科的な原因がないかを、総合内科専門医・呼吸器専門医として専門的に診察し、治療できるものがあれば治療を行います。
それでも明らかな原因が見つからない場合には、メンタルヘルスの問題を考え、専門の医療機関へご紹介します。
幸い溝の口駅前には、メンタルヘルスを専門に診るクリニックがいくつかあり、連携がしやすい環境です。
どうぞお気軽にご相談ください。
執筆・監修
溝の口駅前内科・呼吸器内科 院長 高野賢治
(日本内科学会認定総合内科専門医/日本呼吸器学会認定呼吸器専門医/日本アレルギー学会認定アレルギー専門医)
