2026年10月03日
喘息の治療中に声がかれてしまう方へ
喘息をお持ちの方で、以下のようなお悩みはありませんか?
☑ 吸入薬を使い始めてから声がかすれる
☑ 夕方になると声が出にくい
☑ 喉がイガイガする、口の中が白い
☑ 朝になると声が出ない、咳が続いている
喘息の治療において、吸入薬は非常に重要な薬です。
その一方で、声がれ(かすれ)が出ると、吸入を続けることが嫌になり、治療を自己判断で中断してしまう方がいらっしゃいます。
声がれの原因は吸入薬だけとは限らず、原因に応じた対処ができることも少なくありません。
この記事では、喘息治療中の声がれの原因・対処法・受診の目安について、呼吸器専門医の立場から解説します。
なぜ喘息治療中に声がかれるのか
喘息の治療中に声がかれる原因はいくつかありますが、大きくは「喘息そのものや咳によるもの」と、「喘息の治療薬である吸入薬によるもの」に分けて考えることが多いです。
実際には、これらが重なっていることも少なくありません。
① 喘息によるもの
喘息は、空気の通り道(気道)に炎症が起きる病気です。
炎症が続くと痰が増えて喉に絡みやすくなり、痰を出そうと咳払いを繰り返すうちに、声帯を痛めてしまうことがあります。
喉のイガイガ感や違和感を、喘息の症状として訴える方もいらっしゃいます。
喘息のコントロールが十分でないときほど、声がれが目立つことがあります。
② 吸入薬によるもの
吸入薬は、薬を気道に直接届けることで少ない量でも効果を発揮できる反面、一部が喉に付着して残ってしまいます。
特に吸入ステロイドを含む薬では、これが副作用として声がれの原因になることがあります。
喉や口の中に薬が残ることで、声帯やその周囲に影響したり、口の中や喉にカンジダ(真菌)が生えたりすることが関係していると考えられています。
声がれが出ると、吸入を続けることが嫌になってしまう方が多いため、後述するような対応をして、続けられるようにしています。
③ 咳によるもの
咳は、声帯にとって大きな負担になります。
咳が続くと、声帯が繰り返し刺激されて腫れ、声がかれてしまいます。
喘息は夜間から早朝に咳が出やすいため、朝になると声が出にくいという方も少なくありません。
このほかにも、後鼻漏や逆流性食道炎、喉の病気などが隠れていることがあります。
原因によって対処が変わりますので、次に原因ごとに詳しく解説します。
声がれの治療・対応
原因に応じて、次のような対応を行っています。
対応1:喘息の治療を行う・コントロールを良くする
喘息の治療をまだ受けていない方は、治療を開始します。
治療中でも咳などの症状が残っている方は、薬の強化を検討します。
喘息が落ち着くと咳や痰が減り、声帯への負担も軽くなります。
対応2:吸入薬の変更
吸入薬を変更することで、声がれが改善することがあります。
・喘息のコントロールが得られている場合は、吸入ステロイドを中心に、一段階弱い治療へ変更することがあります。
・粉末(ドライパウダー)の薬よりも、ミスト(エアゾール)の製剤のほうが、声がれが少ない傾向があります。
対応3:吸入手技の確認
呼吸器内科が最も介入できる部分だと考えています。
私見も含まれますが、主に次のような指導をしています。
・吸入を行った後にうがいを十分に行う
・ドライパウダーは強く吸いすぎない。
「少し弱く、少し長く吸う」ことで、粉が喉に残りにくくなり、気道の奥まで届きやすくなります。
思いきり吸っている方は意外と多いですが、ご高齢の方や肺機能が低下している方でなければ、それでも十分に吸入できることが多いと考えています。
・吸入前に水を飲む。
口腔内が乾燥していると、薬の成分が喉に残りやすくなる可能性があります。
(・1日1回の製剤は、夜から朝の吸入に変更する。)
夜に吸入して寝る方は多いですが、それでは睡眠中、飲食をしないまま薬が口や喉に残り続けます。
朝に変えると、その後の飲食で薬が洗い流されやすくなることを期待しています。
ただし、病状と合わせて主治医と相談が必要です。
対応4:咳止めの調整
咳そのものが声帯の負担になります。
根本的な解決にはなりませんが、咳止め(鎮咳薬)を調整することで、負担を減らします。
受診の目安
次のようなときは、早めにご相談ください。
治療薬の変更や吸入手技の確認で、改善できることが多くあります。
・声がれで、日常生活や仕事に支障をきたしている
・うがいなどを行っていても、良くなる気配がない
・吸入薬を休みがちになってきている
次のような場合は、吸入薬以外の原因も考え、耳鼻咽喉科での診察が必要になることがあります。
・声がれが2週間以上続いている
・血痰が出る、飲み込みにくい、喉に強い痛みがある
・息苦しさや、ゼーゼーする感じが強くなっている
・喫煙されている(または、されていた)
自己判断で吸入薬をやめてしまうと、喘息のコントロールが悪化することがあります。その場合は、かえって悪化するリスクもあります。
声がれがつらいときは、やめる前にまずご相談ください。
治療の調整に加えて、必要に応じて耳鼻咽喉科の受診もご案内します。
院長からのメッセージ
声がれがあるからといって、自己判断で吸入を中断しないことが最も重要です。
吸入薬による治療と、その副作用への対応は、呼吸器内科医が最も得意とする領域です。
喘息は、治療を続けられないと再燃のリスクがとても高い病気です。だからこそ、安心して続けられるように、どうぞお気軽にご相談ください。
よくある質問
Q. 吸入薬をやめれば声は治りますか?
A. 吸入薬を調整することで改善することはあります。ただし、自己判断で中断するのは危険ですので避けてください。吸入薬の種類を変えなくても、吸入の仕方を工夫することで良くなる場合もあります。まずはご相談ください。
Q. うがいをしても声がかれます。なぜですか?
A. 喉に付着した吸入薬が影響している可能性はありますが、うがいで十分に取り切れていないことも考えられます。また、うがいの問題ではなく、喘息そのものや咳など、病状が原因になっている場合もあります。原因によって対応が変わるため、一度ご相談ください。
Q. 薬を変えれば改善しますか?
A. 改善することもありますが、喘息の病状との兼ね合いが必要です。自己判断で変更せず、主治医とよく相談してください。
Q. 歌う仕事・話す仕事でも吸入ステロイドは使えますか?
A. はい、使えます。むしろ、咳のしすぎや喘息のコントロールの悪化は、吸入薬のデメリットよりも声への影響が大きくなる可能性があります。薬の種類や吸入の仕方を工夫しながら、続けていくことが大切です。
執筆・監修
溝の口駅前内科・呼吸器内科 院長 高野賢治
(日本内科学会認定総合内科専門医/日本呼吸器学会認定呼吸器専門医/日本アレルギー学会認定アレルギー専門医)
