2026年10月05日
不妊治療中で咳や息切れが気になる方へ
不妊治療中の方で、以下のようなお悩みはありませんか?
☑ 移植や採卵の予定日が近いのに咳が出ている
☑ 咳止めや風邪薬を飲んでよいかわからない
☑ 喘息の吸入薬を、治療中も続けてよいか迷っている
☑ 排卵誘発のあとから息苦しい、咳が出る(※)
※排卵誘発後の息苦しさや咳は、卵巣過剰刺激症候群(OHSS)による胸水などが原因のことがあります。急な体重増加やお腹の張りを伴う場合は、呼吸器内科ではなく、まず治療を受けている産婦人科へ早めにご連絡ください。
不妊治療中に呼吸器症状が気になって来院される患者さんが一定数いらっしゃいます。
咳や息切れの原因は、風邪や咳喘息、気管支喘息など呼吸器の病気であることもあれば、治療そのものに関連することもあります。
この記事では、不妊治療中の咳・息切れについて、日本呼吸器学会認定呼吸器専門医の立場から、原因、薬の考え方、受診の目安を解説します。
なぜ不妊治療中に咳が気になるのか?
まず知っていただきたいのは、「不妊治療そのものが喘息や咳の原因になる」と言えるほどの根拠は乏しいということです。
それでも、不妊治療中に咳や息切れが気になる原因として、次のようなことが考えられます。
① もともとの咳喘息・気管支喘息が見つかる
治療で通院や体調管理を意識するようになり、以前からあった咳が気になって受診される方がいます。咳喘息や喘息は、診断されないまま続いていることも少なくありません。
② 風邪などの感染症で咳が出る
通院の機会が多く、季節によっては風邪や感染症をきっかけに咳が出ることがあります。風邪のあとに咳だけが長引く場合は、咳喘息が隠れていることもあります。
③ ホルモン変動で症状が変わる
原因ははっきりしませんが、女性ホルモンの変動が喘息の症状に影響する可能性があります。月経の前後や、妊娠出産を契機に咳や喘息が悪化する方がいるのはそのためと考えられています。
④ 薬を控えたことで悪化する
「治療中に吸入薬を使って大丈夫だろうか」と不安になり、自己判断で喘息の薬を中止して悪化する方がいます。実際には、喘息は治療を続けて症状を安定させることが大切です。
⑤ 排卵誘発に伴う卵巣過剰刺激症候群(OHSS)
咳や息切れは、呼吸器の病気ではなく、治療に関連して起こることもあります。急な体重増加やお腹の張りを伴う場合は、まず産婦人科へご連絡ください(詳しくは後述します)。
不妊治療中に咳が出るときの考えについて
喘息の吸入薬は、妊活中も妊娠中も継続が原則です
妊娠・出産と呼吸器疾患の考え方として、喘息の治療は妊活中も、妊娠中も続けることが基本です。
薬の安全性を心配しすぎないでください
周産期のリスクとして重要なのは、薬の影響を心配しすぎて喘息の治療が不十分になることです。喘息のコントロールが悪くなると、お腹の赤ちゃんにも負担がかかると考えられています。
そのため、処方された吸入薬を自己判断で中断することは避けてください。不安なときは、やめる前に主治医に相談することが一番大切です。
市販の咳止め・風邪薬は、産婦人科の指示に従ってください
市販の咳止めや風邪薬は、成分によって判断が分かれます。自己判断で飲まずに、必ず産婦人科の主治医に相談しましょう。
緊急性があるとき
以下のような症状があるときは、早めに相談が望ましいです。
卵巣過剰刺激症候群(OHSS)
排卵誘発後の息苦しさ・咳がOHSSのサインのことがあります。
OHSSで胸に水(胸水)がたまると、息苦しさや咳が出ることがあります。
緊急性があるため、次のような症状を伴う場合は、呼吸器内科ではなく、まず治療を受けている産婦人科へ早めにご連絡ください。
☑ 急な体重増加
☑ お腹の張り、腹痛
☑ 吐き気、尿量の減少
☑ 横になると息苦しい
血栓症(肺塞栓)
排卵誘発中は、血栓症のリスクが高まることがあります。次のような症状は危険なサインです。
☑ 突然の息苦しさ、胸の痛み
☑ 片方の脚の腫れや痛み
☑ 血が混じった痰
これらがある場合は、救急受診(必要なら119番)を検討してください。
麻酔の前には、喘息のことを必ず伝えてください
採卵などで麻酔を受ける前には、喘息の既往と、現在の状態(最近の発作の有無、使っている薬)を担当の医師に伝えることが実務上とても重要です。吸入薬を使っている場合は、その旨もお伝えください。
喘息の治療は、自己判断で中止しない
喘息は妊娠前後の管理が大切です。多くの場合、吸入ステロイドは続けたほうがよいとされ、コントロール不良のリスクのほうが問題になります。自己判断で中止せず、産婦人科の主治医と連携しながら治療を続けましょう。
院長からのメッセージ
不妊治療中は、OHSS(卵巣過剰刺激症候群)など特有の合併症が起こることがあります。また、患者さんが非常にセンシティブな状況にあるため、咳や息切れにも敏感になっているという背景があります。
このような不妊治療中の息苦しさなどの呼吸器症状に対して、当院では呼吸器専門医として、検査と治療を行います。OHSSは産婦人科と連携しながら対応が必要な病気ですので、外来で経過をみられる場合は、産婦人科の先生とよく相談しながら経過観察と治療を進めます。
当院は呼吸器の専門クリニックですので、一番お力になれるのは喘息の専門的な治療です。不妊治療や妊娠をきっかけに喘息の治療を中断しないよう、喘息についての患者教育を行いながら、出産まで喘息のコントロールを良好に保つことを目標にしています。お気軽にご相談ください。
なお、OHSSを疑うような急な息苦しさについては、まず産婦人科へのご相談が望ましいので積極的な連携をとっていきます。
ぜひ、お困りの際には当院へご相談ください。
執筆・監修
溝の口駅前内科・呼吸器内科 院長 高野賢治
(日本内科学会認定総合内科専門医/日本呼吸器学会認定呼吸器専門医/日本アレルギー学会認定アレルギー専門医)
